PTA委嘱研究とは長野県PTA連合会がPTA活動を活発化し、より子どもたちの健全な育成と学校活動を促進する目的から単位PTAにおけるPTA研究活動を推進していくものです。
長野県内の4ブロックから代表校を決め、各ブロックから選ばれた学校は2年間を通して自校が設定したテーマに取り組みます。
毎年春に行われる「単P役員研修会」や「関東ブロック大会」などの場でプレゼンテーションする機会が設けられています。
『明南小学校版SDGs』の策定と推進
学校紹介
明南小学校がある明科地域は、安曇野市の北東部に位置し、東の筑摩山地と犀川および高瀬川の河岸段丘によって形成されている。地域の約3分の2は山地で、平地は松本平の最低部に位置し、ここで犀川・高瀬川・穂高川の三川が合流するなど、非常に豊かで貴重な自然環境に恵まれており、水郷明科としても有名である。
昭和36年、中川手小学校と七貴小学校が統合されたことで、明科町立明南小学校として発足したが、平成17年、豊科町・穂高町・三郷村・堀金村と明科町が合併し、安曇野市となったことに伴い、現在の安曇野市立明南小学校となった。
学校目標を『夢をゆたかに 未来をになう子ども』とし、重点目標として①かしこく(授業改善・家庭学習の充実・読書)②やさしく(人とのつながり・明るい気持ちになれるあいさつ)③たくましく(体力向上・時間のメリハリ・清掃)を定め、学校運営が行われている。
PTA組織
本 部…三役会(会長・副会長・会計)
事務局…幹事(事務担当・市P担当・会計担当・特別会計担当)
専門部…学年部(正副会長)、校外指導部(正副会長)、文化広報部(正副会長)
その他…顧問(前会長)、監事、学年PTA(正副会長)、学級PTA(正副会長)、おやじの会(有志)
PTA運営の状況
PTA総会、PTA総役員会、PTA講演会、PTA広報誌発行、PTA作業、引き渡し訓練、
アルミ缶回収、お弁当の日、防犯パトロール、リユース活動、学校行事への協力、各種会合の参加
研究テーマ
『明南小学校版SDGs』の策定と推進』~より良い学校生活を送るために~
研究テーマ設定の趣旨
本校では、家庭数と児童数が年々減少傾向にあり、それに伴い、PTA活動を含めた学校教育活動に無理矛盾が生じ始めている。今後も数年間は児童数の増加が見込めない中、未来に向け子どもたちの学校生活がより良いものとなるよう、現在の状況に合わせた取り組みを行う必要性を感じ、SDGsに関連させた明南小学校独自の目標(ゴール&ターゲット)を作りたく、今回の研究テーマとして設定した。
また、家庭や学校生活の中で既に取り組んでいることが、実はSDGsと深い関わりがあるということを広く周知し、それを身近なものにすることで、一人ひとりの意識向上に繋げたいと考える。
研究内容
【 専門講師との連携 】
SDGs公認ファシリテーターとして、主に松本地域で活躍されているポジ◎ラボ代表 丸山亜希さんの協力を得て、SDGsの知識と理解を深めるため以下のような取り組みを行い、研究テーマの推進を図った。
①ワークショップの開催
授業の一環として、SDGsをテーマとしたカードゲーム型ワークショップを5・6年生対象に開催し、自らの行動や選択が未来に与える影響を疑似体験することで、SDGsの目的と必要性について理解を深めることができた。
また、その様子をPTA会員向けにオンライン上で配信することで、保護者と児童の間に話題が生まれ、コミュニケーションをとりつつSDGsについて考えるきっかけのひとつとなった。
②PTA講演会の開催
毎年PTAが主催する講演会に丸山亜希さんを講師としてお招きし、保護者と児童を対象にした2部制の講演会を開催。(例年、一時間程度の講演時間としていたが、より年齢に即した講演内容とするため、低学年・高学年に分けた開催方法とした。)
演題:『SDGsを学んで 地球を守るヒーローになろう!』
講師:「ポジ◎ラボ代表」丸山亜希さん 「歩き方の学校」スタッフ3名
対象:1~3年生とその保護者(50分間)
4~6年生とその保護者(50分間)
内容:スクリーンを使用し、歌に合わせたSDGsの概略の説明、関連する写真のスライドショー、
イラストやデータを用いた世界の現状についてのお話など、なるべく難しくならないよう工夫
していただいた。また、クイズとウォーキングを組み合わせたワークショップ形式にすること
で、楽しみながらSDGsについて学ぶことができた。
講演終了後、PTA会員向けのアンケートを実施し、以下のような意見や感想をいただいた。
(一部抜粋)
≪成果と思われる点≫
・様々な場所でSDGsについて取り上げられているが、まだ関心が薄かったため、今回の講演
がいいきっかけになった。
・クイズや運動を取り入れた内容で子どもにも分かりやすく、楽しみながらSDGsを学べた。
・子どもと一緒に参加したことで共通の話題ができ、会話の中に自然とSDGsという言葉が増え、
今まで以上に意識するようになった。
≪課題と思われる点≫
・講演の中で“男性”“女性”という表現があり、今回のテーマから考えると少し不適切だった。
・SDGsというテーマが広いため、貧困のみにするなど、もう少し的を絞ってほしかった。
・子どもが聞くには丁度いい時間だったが、親としてはもっとじっくり聞きたい内容だった。
【 学校との連携 】
学校生活の中でSDGsと関わりのあるものに対し、どの目標と
関係しているのかを児童に意識付けするため、学校の協力を得なが
ら以下のような取り組みを行った。
【 児童会との連携 】
高学年による低学年向けの絵本(SDGs関連)の読み聞かせや、ゴミを拾い集めることでポイント化するゴミ貯金など、SDGsを意識した活動を計画し実践した。
今後、年度末までに、本研究テーマでもある『明南小学校SDGs』を次期児童会と協力し策定する予定である。
【 地域との連携 】
本校のボランティア団体である「とんがりサポート」に依頼をし、SDGsを意識した絵本の読み聞かせや、リユースを意識した工作活動などを行った。
【 PTAとの連携 】
PTA事業(防犯パトロール、アルミ缶回収、PTA作業、リユース活動 など)にSDGsとの関連性を持たせることで、会員の意識向上に繋げた。
また、PTA広報誌とんがりぼうしを利用し、会員へのSDGsの周知に努めることで、認知度アップを狙った。
【 アンケートの実施 】
会員とその家族向けに、SDGsの認知度アンケート調査を研究開始当初と終了後の2度実施し、どのような変化がみられるかを数値化することで、本研究による成果を測る。
研究の成果
学校生活のみに関わらず、普段何気なく行っていることが実はSDGsと深い関わりがあることに気付かされ、PTA会員と児童の意識向上に繋がり、SDGsがより身近な存在になったと考えられる。2年間にわたる研究活動の具体的成果として、以下の点が挙げられる。
○アルミ缶回収の方法変更
アルミ缶回収の目的を単に収益とせず、SDGsの目標12『つくる責任・つかう責任』を意識
したものにすることで、リサイクル活動への自主性を強めた。
その結果、これまでの半強制的な回収作業から、学校に設置した回収用コンテナへの自由持ち込みとすることで、過疎化による人手不足で作業が困難だった地域でも、対応可能(持続可能)なものに変えることができた。
収益の面では、引き取り価格の変動もあり、例年の半分程度と予想以上に落ち込んでしまったが、一人ひとりのリサイクル活動に対する意識付けができたため、今後も同じ方法での回収作業が決定している。収益については、リサイクルに対する更なる意識の向上を図ることで、結果として改善されていくのが望ましいと考える。
○PTA会則の変更
これまで本校PTA会則において、男性会長1名、男女副会長各1名の選出と規定されていたが、
来年度より、SDGsの目標11『ジェンダー平等を実現しよう』の観点から、性別による規定を
撤廃し、より柔軟なものとした。
○清掃活動の動機づけ
SDGsの目標11『住み続けられるまちづくりを』の“まち”を明南小学校に置き換えること
で、児童による清掃活動の意識向上に繋がり、PTA作業(学校施設の清掃活動)もより意義のあるものとすることができた。
○SDGs認知度調査アンケート(一部抜粋)
※会員とその家族を対象に行い、565人からの回答が得られた。
今後の課題と方向性
コロナ禍の影響もあり、研究1年目は十分な活動ができず不本意な結果に終わってしまったが、2年目に入るとコロナによる制限の緩和、さらに学校関係者の多大なる協力のおかげで計画通りに活動することができ、一定の成果を上げることができた。これらを一過性のものとして終わらせるのではなく、SDGsと同じく持続可能なものにしていくことが今後の課題となる。その解決策の一つとして児童会との連携が重要と考え、本研究のテーマでもある『明南小学校版SDGs』の策定と推進に向け、今後もより一層PTAとして注力していく。
2019年 委嘱研究報告 ~ 安曇野市立堀金中学校PTA ~
研究テーマ「生徒会による薬草集めの発展的な継続および推進のための支援」
堀金中学校で長年行われている薬草集めの歴史の調査と、生徒たちが今後も継続的に活動することが出来るようPTAとして支援する。
研究テーマ設定の趣旨
堀金中学校では生徒たち自身の手で生徒会費を確保するべく、資源物回収やトマト収穫作業など様々な活動を行っている。その中でも伝統的に行われている薬草集めについて、その歴史を調査し広く保護者や生徒に知らしめたいと考えた。
歴史が長いために薬草集めが始められた経緯や活動の趣旨を正しく理解している保護者や生徒が減ってきているのが実情で、地域住民も代替わりや転居などで生徒たちとの関わりも薄くなり、活動の様子を知らない方が増えている。
上記のことを踏まえ、生徒たちが更に活動への理解を深め誇りをもって薬草集めに取り組めるように後押ししていきたい。また、薬草集めの活動を他校に紹介するとともに、生徒たちが後輩たちに伝統を確実に引き継げるようにPTAとしても取り組んでいきたいと考えた。
研究内容
(1)活動の歴史と経過の検証
・薬草集めがいつごろからどのような目的で始まったのかを知るために、また、薬草集めの過去の活動や思い出を教えていただくために、卒業生、家人、地域の方々にアンケート形式で調査を行いこれまでの歴史を探る。
・学校内外に残る記録をたどり、歴史をひもとくとともに今後の発展の方法を探る。地域住民、諸先輩方にも教えをいただく。
(2)活動の成果ともたらした効果の明文
・生徒会の記録をもとに、過去の収益実績や収益をまとめ推移を検証する。
(3) 正確な採集方法の整理と明文化
・薬草を買い取ってくれる業者に聞き取りを行い、どのような薬草を、どのように採集するべきかを学び、生徒や保護者に紹介する。
・買い取られた後の薬草の流通経路や加工される過程、加工された商品などをまとめる。
(4) 生徒や保護者、地域住民上記を紹介し協力をお願いする。
・(1)~(3)を踏まえ、薬草集めの生徒会活動に保護者や地域住民にも協力をお願いし、長年地域にお住まいの方の知識や薬草の分布場所などの情報提供を呼びかける。
(5) 研究活動を取りまとめ後輩へ活動を継承するための資料の作成
・研究委嘱での調査研究結果を一冊にまとめ記録として残す。薬草集めの歴史や薬草の種類を分かりやすく記載することで生徒たちが今後も薬草集めをする際の手助けになればと考える。
研究の成果
(1)薬草集めの起源から現在に至るまでの経過
調査研究の一環として堀金中学校や市役所の文献を調べたり、保護者や地域の方々にアンケート調査を行い薬草集めの歴史を知ることができた。
文献によるとその起源は大正時代にまで遡ります。当時烏川村岩原の尾日向勘次郎氏を中心とする有志によりアルプスクラブが発足します。アルプスクラブでは入浴や飲食もでき、山村の格好の憩いの場となった。ところが昭和に入り経済的な不況や戦争の影響で経営維持ができなくなり、昭和16年に村に引き渡されます。翌17年に学校の宿泊訓練施設、須砂渡修練所として新たに発足しますが、その際須砂渡修練所の補修の費用を得る目的で小学生が烏川の奥に笹の実を採りに行ったり、田んぼの土手や農道でゲンノショウコやオオバコなどの薬草を採ったとの記述があり、現在の薬草集めの起源と考えられる
昭和22年、新学制実施に伴い烏川三田村学校組合立堀金中学校開校、昭和30年には、両村合併し堀金村立堀金中学校となりましたが開校当時から薬草集めは行われていました。当時の活動主体は分かりませんが、昭和46年の生徒会活動記述に、会費の軽減と体を通しての実践活動を重視し会員全員が薬草集めを行うとあり、この頃に生徒会活動としての薬草集めが形づけられたと考えられます。以後昭和52年に薬草委員会、耕作委員会の特別委員会が設置され、薬草や銀杏の収益金を生徒会活動費に充てています。昭和56年、薬草委員会と耕作委員会を統合し生産委員会が生まれ現在まで続いています。
(2)各部の活動を通した保護者や地域の方々への働きかけ
PTA各部の活動を通して、保護者や地域の方々に生徒会活動の薬草集めを紹介したり協力をお願いすることで、活動への理解や関心を持ってもらうことができた。
・本部による各家庭や地域の方々へのアンケートの実施により薬草集めの過去の取り組みや思い出話を伺うことができた
・校外指導部で行っている地区懇談会では、各地域での薬草の分布などの保護者間での情報交換をするなど有意義な話し合いができた。
・文化部では毎年PTA新聞を発行しているが、薬草集めに関する記事を載せることで薬草集めを紹介したり関心を持ってもらうことができた。
・家庭共育委員会ではPTA講演会で、堀金中学校OBでもあり落語家としても活動している前年度PTA会長を講師としてお招きし、OBならではの視点も含め薬草集めの話をしていただいた。
・各部それぞれ毎年行っている活動の中に薬草集めの内容を取り込むことで、過度の負担なく取り組むことができた。
(3)採集後薬草が製品になるまでの経路
業者の方にも話を伺い回収後の流通経路等を知ることができた。回収後についてはほとんど知られておらず、今回調査をし、集めた薬草が製品となり全国の消費者の手に届く内容が分かり生徒の採集意欲も上がった。
(4)ガイドブックの作成
薬草集めの調査結果をガイドブックにまとめ生徒たちに配布した。生徒会の委員会でも活用してもらい生徒たちにその歴史や薬草の種類を伝えることができた。
ガイドブックの作成
薬草集めの調査結果をガイドブックにまとめ生徒たちに配布した。生徒会の委員会でも活用してもらい生徒たちにその歴史や薬草の種類を伝えることができた。
今後の課題
(1)生徒会による活動の引継ぎ
今年度、研究委嘱を受けPTAとして薬草集めについて調査研究を行い、薬草集めの起源や過去の薬草集めの取り組み等を改めて見つめなおすことができ、またガイドブックや生徒会を通じて生徒たちにも伝えることができた。しかしあくまで薬草集めは生徒会の活動であり、各家庭で保護者が採集の手伝いをすることには大いに賛成ですが、PTAとして直接的に関わることは生徒の自主性を損なうため避けるべきだと考える。
近年の少子化による生徒の減少や道路の舗装等による薬草分布の変化により、今後薬草集めの継続が困難になることが予想されため、今年度作成したガイドブックの活用や保護者としてのバックアップが必要である。
2017年 安曇野市が研究担当校に選出されました
2017年は中信ブロックから安曇野市が選出されています。単位校はまだ決定していませんが、全県のモデルとなるように、そして何よりも子どもたちの役に立つような研究発表となりますよう連合会としてもバックアップさせていただきます。
これまでの委嘱研究のご紹介
■ 研究テーマ「子どもたちの食の力を育てよう」〜生涯役に立つ食育を目指して〜
千曲市立戸倉上山田中学校PTA
たくさんの食べ物があふれている現代において、食に関する基礎的な知識や技術を身につけながら、子どもたち自身が大人になった時に、食を選択し判断する力がついていることを目指す。
■ 研究テーマ「読書で親子のふれあいのひととき」
箕輪町立箕輪北小学校PTA
家庭での読書のあり方をを見直し、学校と家庭が一つになって読育に取り組んでいこうと考えた。家庭ごとに曜日を決めて「ノーメディアデー」とし、本に親しむことを提案。読書を通して親子のふれあいの時間をつくりだす契機にしていきたい。
■研究テーマ「学習や運動・体力向上につながる生活習慣づくりをめざして」
上松町立上松中学校PTA
学習や運動・体力向上につながる生活習慣について、生徒が自ら気づき改善していけるよう働きかける。
■研究テーマ「子どもたちの安心・安全をめざして」
長野市立裾花小学校PTA
子どもたちの日々の安全を確保するために、保護者として取り組みをすいしんする。そのために、これまでの安全マップの見直しをし、防犯パトロールの意義を考える。
■研究テーマ「子どもたちの防災への意識向上」
安曇野市立明北小学校PTA
子どもたちの防災への意識を高め、災害発生時に自主的に判断し行動できる力を養う。災害発生時に「学校・PTA・地域社会」が連携して子どもたちの安全を確保し、併せて人命・財産を守る手法を身につける。
■研究テーマ「学校支援ボランティアの立ち上げ」
佐久市立臼田中学校PTA
ボランティアを通して子どもと大人、地域と学校との親交を深める機会を増やし、地域と学校の協力の場をつくり、地域全体の教育力向上を目指す。
■研究テーマ「メディアとの向き合い方・親子のコミュニケーション」
松本市立山辺小学校PTA
子どもとメディア(特にテレビ、ビデオ、携帯ゲーム、インターネット)の付き合い方を正しく理解して、親子の時間(コミュニケーション)を大切にしながら、子どもとメディアのよい関係をつくりだす。
■信濃小中一貫校におけるPTA活動のあり方
信濃町立信濃小中学校
小中一貫校となったのちのPTA活動のあり方について、会員の意識調査を行うことにより、課題などを洗い出し、今後の活動の目標を設定します。