PTA委嘱研究とは長野県PTA連合会がPTA活動を活発化し、より子どもたちの健全な育成と学校活動を促進する目的から単位PTAにおけるPTA研究活動を推進していくものです。
長野県内の4ブロックから代表校を決め、各ブロックから選ばれた学校は2年間を通して自校が設定したテーマに取り組みます。
毎年春に行われる「単P役員研修会」や「関東ブロック大会」などの場でプレゼンテーションする機会が設けられています。

2019年 委嘱研究報告 ~ 安曇野市立堀金中学校PTA ~

研究テーマ「生徒会による薬草集めの発展的な継続および推進のための支援」

堀金中学校で長年行われている薬草集めの歴史の調査と、生徒たちが今後も継続的に活動することが出来るようPTAとして支援する。

研究テーマ設定の趣旨

堀金中学校では生徒たち自身の手で生徒会費を確保するべく、資源物回収やトマト収穫作業など様々な活動を行っている。その中でも伝統的に行われている薬草集めについて、その歴史を調査し広く保護者や生徒に知らしめたいと考えた。
歴史が長いために薬草集めが始められた経緯や活動の趣旨を正しく理解している保護者や生徒が減ってきているのが実情で、地域住民も代替わりや転居などで生徒たちとの関わりも薄くなり、活動の様子を知らない方が増えている。
上記のことを踏まえ、生徒たちが更に活動への理解を深め誇りをもって薬草集めに取り組めるように後押ししていきたい。また、薬草集めの活動を他校に紹介するとともに、生徒たちが後輩たちに伝統を確実に引き継げるようにPTAとしても取り組んでいきたいと考えた。

研究内容

(1)活動の歴史と経過の検証
・薬草集めがいつごろからどのような目的で始まったのかを知るために、また、薬草集めの過去の活動や思い出を教えていただくために、卒業生、家人、地域の方々にアンケート形式で調査を行いこれまでの歴史を探る。
・学校内外に残る記録をたどり、歴史をひもとくとともに今後の発展の方法を探る。地域住民、諸先輩方にも教えをいただく。
(2)活動の成果ともたらした効果の明文
・生徒会の記録をもとに、過去の収益実績や収益をまとめ推移を検証する。
(3) 正確な採集方法の整理と明文化
・薬草を買い取ってくれる業者に聞き取りを行い、どのような薬草を、どのように採集するべきかを学び、生徒や保護者に紹介する。
・買い取られた後の薬草の流通経路や加工される過程、加工された商品などをまとめる。
(4) 生徒や保護者、地域住民上記を紹介し協力をお願いする。
・(1)~(3)を踏まえ、薬草集めの生徒会活動に保護者や地域住民にも協力をお願いし、長年地域にお住まいの方の知識や薬草の分布場所などの情報提供を呼びかける。
(5) 研究活動を取りまとめ後輩へ活動を継承するための資料の作成

・研究委嘱での調査研究結果を一冊にまとめ記録として残す。薬草集めの歴史や薬草の種類を分かりやすく記載することで生徒たちが今後も薬草集めをする際の手助けになればと考える。

研究の成果

(1)薬草集めの起源から現在に至るまでの経過
調査研究の一環として堀金中学校や市役所の文献を調べたり、保護者や地域の方々にアンケート調査を行い薬草集めの歴史を知ることができた。
文献によるとその起源は大正時代にまで遡ります。当時烏川村岩原の尾日向勘次郎氏を中心とする有志によりアルプスクラブが発足します。アルプスクラブでは入浴や飲食もでき、山村の格好の憩いの場となった。ところが昭和に入り経済的な不況や戦争の影響で経営維持ができなくなり、昭和16年に村に引き渡されます。翌17年に学校の宿泊訓練施設、須砂渡修練所として新たに発足しますが、その際須砂渡修練所の補修の費用を得る目的で小学生が烏川の奥に笹の実を採りに行ったり、田んぼの土手や農道でゲンノショウコやオオバコなどの薬草を採ったとの記述があり、現在の薬草集めの起源と考えられる
昭和22年、新学制実施に伴い烏川三田村学校組合立堀金中学校開校、昭和30年には、両村合併し堀金村立堀金中学校となりましたが開校当時から薬草集めは行われていました。当時の活動主体は分かりませんが、昭和46年の生徒会活動記述に、会費の軽減と体を通しての実践活動を重視し会員全員が薬草集めを行うとあり、この頃に生徒会活動としての薬草集めが形づけられたと考えられます。以後昭和52年に薬草委員会、耕作委員会の特別委員会が設置され、薬草や銀杏の収益金を生徒会活動費に充てています。昭和56年、薬草委員会と耕作委員会を統合し生産委員会が生まれ現在まで続いています。
(2)各部の活動を通した保護者や地域の方々への働きかけ
PTA各部の活動を通して、保護者や地域の方々に生徒会活動の薬草集めを紹介したり協力をお願いすることで、活動への理解や関心を持ってもらうことができた。
・本部による各家庭や地域の方々へのアンケートの実施により薬草集めの過去の取り組みや思い出話を伺うことができた
・校外指導部で行っている地区懇談会では、各地域での薬草の分布などの保護者間での情報交換をするなど有意義な話し合いができた。
・文化部では毎年PTA新聞を発行しているが、薬草集めに関する記事を載せることで薬草集めを紹介したり関心を持ってもらうことができた。
・家庭共育委員会ではPTA講演会で、堀金中学校OBでもあり落語家としても活動している前年度PTA会長を講師としてお招きし、OBならではの視点も含め薬草集めの話をしていただいた。
・各部それぞれ毎年行っている活動の中に薬草集めの内容を取り込むことで、過度の負担なく取り組むことができた。
(3)採集後薬草が製品になるまでの経路
業者の方にも話を伺い回収後の流通経路等を知ることができた。回収後についてはほとんど知られておらず、今回調査をし、集めた薬草が製品となり全国の消費者の手に届く内容が分かり生徒の採集意欲も上がった。
(4)ガイドブックの作成
薬草集めの調査結果をガイドブックにまとめ生徒たちに配布した。生徒会の委員会でも活用してもらい生徒たちにその歴史や薬草の種類を伝えることができた。

ガイドブックの作成

薬草集めの調査結果をガイドブックにまとめ生徒たちに配布した。生徒会の委員会でも活用してもらい生徒たちにその歴史や薬草の種類を伝えることができた。

今後の課題

(1)生徒会による活動の引継ぎ
今年度、研究委嘱を受けPTAとして薬草集めについて調査研究を行い、薬草集めの起源や過去の薬草集めの取り組み等を改めて見つめなおすことができ、またガイドブックや生徒会を通じて生徒たちにも伝えることができた。しかしあくまで薬草集めは生徒会の活動であり、各家庭で保護者が採集の手伝いをすることには大いに賛成ですが、PTAとして直接的に関わることは生徒の自主性を損なうため避けるべきだと考える。
近年の少子化による生徒の減少や道路の舗装等による薬草分布の変化により、今後薬草集めの継続が困難になることが予想されため、今年度作成したガイドブックの活用や保護者としてのバックアップが必要である。

2017年 安曇野市が研究担当校に選出されました

2017年は中信ブロックから安曇野市が選出されています。単位校はまだ決定していませんが、全県のモデルとなるように、そして何よりも子どもたちの役に立つような研究発表となりますよう連合会としてもバックアップさせていただきます。

これまでの委嘱研究のご紹介

2011年ー2016年 研究委嘱PTA テーマ抜粋

■ 研究テーマ「子どもたちの食の力を育てよう」〜生涯役に立つ食育を目指して〜
  千曲市立戸倉上山田中学校PTA

たくさんの食べ物があふれている現代において、食に関する基礎的な知識や技術を身につけながら、子どもたち自身が大人になった時に、食を選択し判断する力がついていることを目指す。

■ 研究テーマ「読書で親子のふれあいのひととき」
  箕輪町立箕輪北小学校PTA

家庭での読書のあり方をを見直し、学校と家庭が一つになって読育に取り組んでいこうと考えた。家庭ごとに曜日を決めて「ノーメディアデー」とし、本に親しむことを提案。読書を通して親子のふれあいの時間をつくりだす契機にしていきたい。

■研究テーマ「学習や運動・体力向上につながる生活習慣づくりをめざして」
 上松町立上松中学校PTA

学習や運動・体力向上につながる生活習慣について、生徒が自ら気づき改善していけるよう働きかける。

■研究テーマ「子どもたちの安心・安全をめざして」
 長野市立裾花小学校PTA

子どもたちの日々の安全を確保するために、保護者として取り組みをすいしんする。そのために、これまでの安全マップの見直しをし、防犯パトロールの意義を考える。

■研究テーマ「子どもたちの防災への意識向上」
 安曇野市立明北小学校PTA

子どもたちの防災への意識を高め、災害発生時に自主的に判断し行動できる力を養う。災害発生時に「学校・PTA・地域社会」が連携して子どもたちの安全を確保し、併せて人命・財産を守る手法を身につける。

■研究テーマ「学校支援ボランティアの立ち上げ」
 佐久市立臼田中学校PTA

ボランティアを通して子どもと大人、地域と学校との親交を深める機会を増やし、地域と学校の協力の場をつくり、地域全体の教育力向上を目指す。

■研究テーマ「メディアとの向き合い方・親子のコミュニケーション」
 松本市立山辺小学校PTA

子どもとメディア(特にテレビ、ビデオ、携帯ゲーム、インターネット)の付き合い方を正しく理解して、親子の時間(コミュニケーション)を大切にしながら、子どもとメディアのよい関係をつくりだす。

■信濃小中一貫校におけるPTA活動のあり方
 信濃町立信濃小中学校

小中一貫校となったのちのPTA活動のあり方について、会員の意識調査を行うことにより、課題などを洗い出し、今後の活動の目標を設定します。